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SC-512N1-L/DVIのプレビュー遅延を検証

前回に引き続き遅延の様子をハイスピードカメラEX-ZR300で撮影して検証します。
今回はSC512でキャプチャした映像をアマレコTVでプレビューした際にどの程度遅延するか検証します。 前回の記事と合わせてご覧ください。

基本的にはSC500を使って以前検証したこの記事と同じ内容になりますが、ハイスピードカメラを使うことでより多くの情報がえられます。また120Hzモニターの効果についても言及します。


■検証方法
前回と同じくくるくるベンチの映像をHDMI分配器で2系統にわけ表示します。
一方を直接モニター(RDT233WX-Z)に表示し基準とします。
もう一方をSC512でキャプチャしアマレコTVでプレビュー、XL2420Tで表示します。
キャプチャテスト概要図
前回の結果から左のモニターは右より7コマ早く表示を開始できる点を考慮して、遅延を算出します。

テスト1(Windows7標準)
Windows7でEVRを使ってプレビューした場合をテストします。画面の設定は60Hzにします。
これはWindows7でアマレコTVを使った場合の一般的なケースです。

テスト2(EVRソフトウエアエミュレーション)
Windows7でデスクトップコンポジション(Aero)を無効にした状態でEVRを使った場合のテストです。
スクトップコンポッジションOFF
以前の検証によりこの条件では垂直同期待ちを行わないため遅延が少なくなります。
以下、単にEVRと記述した場合はデスクトップコンポジションを有効にしてEVRを使った場合、EVRエミュレーションと書いた場合はデスクトップコンポジションを無効にした場合を指します。

テスト3(120Hz)
EVRエミュレーションに加え、画面を120Hzに設定したテストです。
画面プロパティ120Hz
120Hz設定
120HzモニターXL2420Tの特性が遅延に影響するか検証します。


■検証に使った機材
前回と同じです。
・PCモニター1(左側) BenQ XL2420T AMAオフ、インスタントモードON
・PCモニター2(右側) 三菱 RDT233WX-Z スルーモードON、CPオフ、超解像OFF
・HDMI分配器 LKV312
・カメラ CASIO EX-ZR300 秒間480コマで動画撮影


■結果
テスト1(Windows7標準)
CIMG0228EVR60[8297-8315]

右のモニターが2コマ目で表示を開始したのに対し、左は16コマ遅れた18コマ目で表示を開始しています。
前回の結果から左のモニターは右より7コマ早く表示を開始できる点を考慮すると
16+7=23コマ(約47.9ms、 約2.88フレーム)の遅延となります。
※ 秒間480コマで撮影しているので1コマは約2.08ms


テスト2(EVRエミュレーション)テスト3(120Hz)
CIMG0230EVRS60_2[9233-9244]CIMG0232EVRS120[18047-18058]
テスト2、テスト3とも左のモニターが4コマ遅れています。
遅延は4+7=11コマ(約22.9ms、 約1.38フレーム)
となります。


■ティアリングについて
テスト2とテスト3ではレンダラーが垂直同期待ちを行わないためティアリングが生じます。 
ティアリングの様子 
本来は画面の上端から白くなってきますが、レンダラーが垂直同期待ちをせず直接フロントバッファ(表示用のバッファ)へ画像を書き込むため写真のように画面の途中から白くなります。今回のテスト2、テスト3の結果はこのタイミングが徐々にずれてきて丁度画面の上端から表示が開始されるたところで観察しています。
テスト1は垂直同期待ちを行うためこのようなティアリングは生じませんが画面の表示タイミングを待つためその分遅延が大きくなっています。


■120Hzモニターと遅延の関係について
テスト2とテスト3は60Hzモニターと120Hzモニター(倍速駆動ではなく120Hz入力120Hz表示のいわゆるネイティブ120Hz) の比較となっています。
理論上画面の上端において60Hzと120Hzで差は出ません。今回の検証でもテスト2とテスト3で画面上端では大きな差は見られませんでした。

差が出るのは画面の下方です。
リフレッシュ速度の差 
テスト3ではNo.9で画面下端が白く表示されているのに対し、テスト2ではまだ画面の中央付近を表示しています。
これはリフレッシュ速度(画面を書き換えていく速度)が120Hzの方が早いからです。 理論上、画面の中央では120Hzモニターの方が2コマ分早く表示され有利です。
なお、これらは画面の上端にティアリングが来ている場合の話ですので、ティアリングが画面の中央で生じているなら、
画面の下部では差が小さく、画面の上部で差が大きくなります。
ややっこしいので平均的に見て120Hzモニターの方がリフレッシュ速度の差により2コマ分(約4.2ms、 約0.25フレーム)有利と見るのが妥当と思います。

もう一つ120Hzモニターが有利になるケースとして「垂直同期待ちの待ち時間が短くなる」というのがあります。
テスト2とテスト3では垂直同期待ちを行っていないので結果に差は出ませんがEVRやオーバーレイレンダラーではティアリングが起こらないように垂直同期タイミングが画面の上(正確には垂直帰線期間)に来るのを待ちますがその待ち時間の最大が60Hzモニターの場合約16.7ms弱なのに対し、120Hzモニターでは約8.3ms弱と半分になります。待ち時間の最小はどちらも0msなので平均をとって60Hzモニターでは平均8.3ms待つ可能性がある。
120Hzモニターでは平均4.2ms待つ可能性がある。とし、その差の4.2msが120Hzモニターを使うメリットとみるのが妥当です。

以上をまとめると
項目60Hz120Hz差(120Hzが有利)
リフレッシュ
速度による差
画面上端0コマ0コマ差は出ない(1)
画面中央4コマ2コマ約4.2ms、 約0.25フレーム(2)
画面下端8コマ4コマ約8.3ms、 約0.5フレーム(3)
垂直同期待ち最小0ms0ms差は出ない(4)
最大約16.7ms約8.3ms約8.3ms、 約0.5フレーム(5)
平均約8.3ms約4.2ms約4.2ms、 約0.25フレーム(6)

120Hzモニターの利点(遅延)
EVR、オーバーレイレンダラーの場合(2)と(6)の合計の約8.3ms、約0.5フレーム
EVR(エミュレーション)では(2)のみの約4.2ms、 約0.25フレーム


■まとめ
今回のテスト結果よりSC512を使って1920x1080 60pをキャプチャしアマレコTVでプレビューした時の遅延は次のようになります。
レンダラー60Hzモニター(実測値)  120Hzモニター(理論値)
EVR約47.9ms、 約2.88フレーム39.6ms、 2.38フレーム
EVR(エミュレーション)約22.9ms、 約1.38フレーム18.8ms、 1.13フレーム



SC-512N1-L/DVIのスルー出力について検証

SC512のスルー出力(HDMI)について遅延が無いか検証してみました。

SC512スルー出力端子 


■検証方法
同じモニターを2つ用意できれば簡単ですが、持っていないのでSC512を挟まない場合と、挟んだ場合の2回に分けて別々にテストして結果を比較して判断します。
テスト概要図

スルー出力に遅延が無ければSC512を挟まない場合と挟んだ場合とで同じ結果が出るはずです。


■検証用映像
検証には遅延がわかりやすいように「くるくるべんち For DirectDraw」を用意しました。
くるくるベンチDD

くるくるベンチは画面を10分割して右端から1フレームごとに白く塗りつぶしていきます。
10フレーム経つと画面が真っ白になるので今度は10フレームかけて黒く塗りつぶします。
この繰り返しとなっています。
今回のテストでは解像度1920x1080、フレームレート60にして、なるべくモニター側でリサイズなどの余計な処理が入らないようにしています。また、各モニターの設定もできるだけ画像処理をOFFにして余計な遅延が生じないようにしてあります。


■検証に使った機材
検証に使った機材
機材品番等設定など
PCモニター1(左側)BenQ XL2420TAMAオフ
インスタントモードON
PCモニター2(右側)三菱 RDT233WX-ZスルーモードON
CPオフ
超解像OFF
HDMI分配器LKV312 
カメラCASIO EX-ZR300秒間480コマで動画撮影

テストの様子  


■テスト1(SC512を挟まない場合)
HDMI用分配器LKV312を使って2つのPCモニターへ分配した様子をハイスピードカメラ(CASIO EX-ZR300)で動画撮影し、出来上がった動画ファイルから連続したビットマップファイルを作成しています。
動画は秒間480コマで撮影したので1コマあたり約2.08msです。またテストしたビデオ信号は60Hzなので8コマ毎にフレーム(画面)が更新され隣の列へ移動する様子がわかります。

CIMG0226分配[4874-4885]

左のモニターは2コマ目で表示が開始されている(画面の上側がほんの少し白くなったコマが表示開始地点です)のに対し、右のモニターは9コマ目で表示が開始されています。これは右のモニターが7コマ分(約14.5ms)遅れていることになります。
左右のモニターが同じであればおそらく同じタイミングで表示が始まるのだと思いますが、今回は機種が違うためこのような違いが生じてしまいます。


■テスト2(SC512を挟んだ場合)
続いて分配器と左側のモニターの間にSC512を挟んでスルー出力※のテストをします。
※ 左のモニターに映っているのはアマレコTVのプレビュー画面ではなくSC512のスルー出力です。

CIMG0227スルー[7749-7760]

結果はテスト1と同様に右のモニターが7コマ分遅れているので、
「SC512のHDMIスルー出力に遅延は無い(極めて少ない)」と言っていいようです。



■モニターについて
左のモニター(XL2420T)は120Hz入力、120Hz表示が可能な120Hzモニターです。今回のように60Hzのビデオ信号を入力した場合は、その特性を生かせず倍速液晶と同じ挙動をすると思っていましたが、今回の結果では画面の上方が白くなり始めてから8コマかけて画面の下に向かって白くなっています(No.2からNo.9)。このことから120Hzでは駆動しておらず、60Hzで駆動していることがわかります※。
どうやらXL2420Tは60Hzのビデオ信号が入力された場合、液晶の駆動も60Hzと柔軟に対応できるみたいです。
※ 秒間480コマで撮影しているので8コマは60Hz(60fps)に相当します。

一方、右のモニター(RDT233WX-Z)は倍速液晶(倍速駆動)なので60Hzのビデオ信号を入力した場合、問答無用で120Hzに変換され表示(120Hz駆動)されます※1。
今回の結果では画面の上方が白くなり始めて4コマ(No.1からno.4)で画面下まで白くなっているので液晶が120Hzで駆動している様子がわかります※2。その後の4コマ(No.5からNo.8)では同じ画像を上書きしているので変化がありません。
※1 三菱のサイトには「スルーモードをONにすると倍速補完が無効になります。」とありますが、補完処理は無効になるけど同じフレームが複製されて結局120Hz駆動するようです。60Hzでの駆動は無理でした。
※2 秒間480コマで撮影しているので4コマは120Hz(120fps)に相当します。

一般的に60Hzのビデオ信号を120Hzで駆動させる場合、どうしても0.5フレーム(約8.3ms)以上のタイミング待ち(遅延)が仕組み上必要になりますので、60Hzのビデオ信号を扱う場合において倍速液晶などは遅延の点で不利になります。
一方、60Hzのビデオ信号を60Hzで駆動させた場合はそのような遅延を必要としないので、今回のケースでは等速駆動ができたXL2420Tの方がRDT233WX-Z(倍速駆動)より遅延が少ない結果となっています。
120Hzモニターにも関わらず、60Hzのビデオ信号が入力された場合は遅延を伴う倍速駆動とはならず、60Hzで液晶を駆動することができるXL2420Tは遅延の評価として非常に優秀だと感じました。

後々、キャプチャカードSC512の遅延やXL2420Tを120Hz動作させた場合の様子、液晶テレビとして比較的遅延が少ないとされているREGZA 32ZP2などもテストしてみたいと思います。


■ダウンロード
くるくるベンチ For Direct Draw


テーマ : PC周辺機器     ジャンル : コンピュータ
 
 
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